老人訪問看護ステーションの
運営・経営について(案)

日本医師会医師会病院・臨床検査センター等検討委員会
委員 平良 章

 老人訪問看護事業は看護婦が開業権を獲得した画期的な事業として歴史的に重要な意義をもつが、その性格上医師、特に地域の開業医との密接な連携が必要である。そして、医療的側面よりも介護、すなわち福祉的側面の強い事業であるにも関わらず、福祉予算ではなく医療費から支出されている点に大きな問題がある。

 先の日本医師会老人訪問看護ステーション連絡協議会においても、その運営・経営上の様々な問題点が指摘され、現場の苦悩する実態が明らかにされたが、集約すれば現在の診療報酬体系ではイニシャルコストが出ないこと、事務量が多過ぎておおよそ管理者一人分の給与に相当する額の赤字が毎月計上されていることの2点に尽きるようであった。しかし、いたずらに診療報酬のアップを主張するのは前述の通り医療費の配分の点からも問題があり、むしろ老人訪問看護事業そのものを医療費から切り離し、福祉予算にシフトすることを要求して行くのが肝要であると思われる。したがって、現時点では、赤字覚悟の医師会立よりも行政の責任としての市町村立ステーション設置を働きかけ、私たちは医療の専門家として正しくノウハウを提供し、その円滑な運営に積極的に関与して行くのが正しい選択ではなかろうか。

 老人訪問看護事業はもちろん営利事業であってはならないが、老人福祉に一部慈善事業的色彩を帯びた事業であり、各郡市の医師会がパイオニア的にこれに取り組む姿勢をみせるのは素晴らしいことであるが、少なくとも現在設立されている老人訪問看護ステーションが市町村の福祉予算の恒常的援助を必要としていることは先の連絡協議会の論を待つまでもなく自明のことであり、このことをもっと社会にアピールし、そのような世論をまきおこす必要があると思われる。


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