日本医師会医師会病院・臨床検査
センター等検討委員会委員になって

静岡県医師会理事 平良 章

 浜松には医師会病院が発展的に移行した県西部浜松医療センターがありますが、私自身は移行してからの入会であり、昨年4月に静岡県医師会理事になって医師会共同利用施設の担当となってからもこの長ったらしい委員会はあまり興味がもてませんでした。今年5月に高野会長に呼ばれて、阿部副会長のあとを受けて中部医師会連合からこの委員会に委員として出るようにと言われた時はまさに青天のへきれきでした。その方面の知識は乏しいし、何にもまして医師一人の診療所で平均月1回朝から1日つぶして東京へ出掛けるのは荷が重い、患者は文句を言うし、診察を少し早めに切り上げるのも容易でない、最近は午後はいつ居るかわからないという噂で患者が午前中に殺到して午前9時から午後1時までの4時間で一日の大半の患者を診なくてはいけないのでトイレも行けない状態、それなのに朝から居ないということになるともう何をいわれるかわからないのです。こうした事情で私自身は平日に2日続けて出るような学校保健の大会などは土曜日だけと決めていますので、もし静岡県医師会理事をもう1期ということになればこのことは大変なネックになるし、次期には医師会病 院か医師会臨床検査センターを持った郡市から出て下さる理事の方に交代していただきたいと切に希望しています。

 そういう事情で今年7月に初めておそるおそる東京へ参りましたが、この委員会はメンバーが12名(敬称略)で委員長(大分・杉田)、副委員長(島根・野坂)、国立医療・病院管理研究所の川渕先生の3人は別格らしいのですが、あと地区別で北海道(辻)、東北(仙台・千田)、関東(栃木・松本)、東京(佐々木)、甲信越(松本・大野)、中部(静岡の私)、近畿(神戸・皆木)、中国四国(福山・田邊)、九州(熊本・田代)という構成ですが、いずれも各県で長いことこの問題と関わっている方ばかりのようです。担当の日医常任理事は宮坂さん。私は早くおはらい箱になりたいのと、杉田委員長から「この委員会は何でも好きなことを言って皆で良い方向を模索して行くところだから何でも思ったことを言いなさい」との暖かい?お言葉をいただき、それがものおじしない私の性格に火をつけて言いたいことはどんどん発言していますのでこの頃はだんだん煙たい存在になりつつあるのかも知れません。ただ、この委員会に出て一番びっくりしたのは極めて政治的な委員会だなということでした。老人訪問看護ステーションは医師会共同利用施設という観点からこの委員会のテーマだし、そのた めに長ったらしいこの委員会の名称も私などは面倒臭くて自分の手帳には『日医病院センター委員会』などといい加減に書いていますが、これにさらに老人訪問看護ステーションを加えて『日本医師会医師会病院・臨床検査センター・老人訪問看護ステーション等検討委員会』との変更も提案され、あまりに長いので例えば『日本医師会医師会共同利用施設検討委員会』にしようとか『日本医師会医師会病院等医療関連施設検討委員会』にしようとかいろいろ議論されているところです。

 その上に健康ICカードとか、スポーツ医学も、検査点数や1物2価の問題、薬剤の建値性も製薬メーカーの好決算や今後の薬価のことも、それに技術料も含めた医療費改正のことも、医師の定数や免許更新、認定医、生涯教育の問題も、看護婦問題も、診療放射線技師も、医療のすべての問題は医師会病院など医師会共同利用施設の問題でもあり、結局は医師会が抱えるすべての問題が討議の対象ということになってしまう、そういう意味で極めて政治的な委員会であるという印象を持ちました。そういう意味でやっぱりそれだけの力を持った人でなければなかなかつとまるものではないなと感じています。そういう委員会に私のような場違いの人間が出て来たことで多少雰囲気も壊れ、またパニック気味のところもあるかもしれませんが、現在のところは私の今まで誰も言わなかったちょっと突飛な、しかしそういえばそうかなと一瞬考えさせられるような(といわれておりますが)意見を尊重していただいてなかなか活発な議論となっています。先日は宮坂常任理事がこれだけいろいろ重要かつ多岐にわたった議論が出るし、2年間やって答申書だけではもったいないからぜひ途中でも常任理事会へ上げ る必要のあるものはどんどん上げて検討させて欲しいという発言をなさっていました。

 村瀬会長から諮問をいただいてから昨年度7回開催、今年度は5回目の先日の委員会で、私としては3回目の委員会ですが、阿部先生から引き継いだ答申書の私の分担である医師会臨床検査センターと老人訪問看護ステーションの運営・経営問題についての案を提出しました。当然私自身が良くわかっていないわけですからいろいろな方々の目をとうしていただいてから提出した訳ですが、内容的には日医の推進して来た方向と相反する部分も多々あり、こういうことを言うと袋だたきに遭うかも知れないがまあ出してみようということで出しました。一同唖然としたのでしょうか、殆ど批判もなく、ただ1つある委員から「老人訪問看護ステーションは日医が医師会立で推進しているのだから浜松でそうしているあなたの気持ちはわかるが『赤字覚悟の医師会立ではなく市町村立を働きかけて医師会はこれに積極的に協力』ではなく、せめて『医師会の加わった第3セクターで推進』程度にしたらどうか」という意見が出ただけでした。むしろ医師会病院や医師会臨床検査センターが診療放射線技師の確保に苦労しているとの話に静岡県医師会で行った実態調査の結果を紹介したところ、たちまちこちらで議 論が沸騰し、医師が作り過ぎによって過剰となりその希少価値が薄れて来た現状から、診療放射線技師会はその希少価値を維持すべくなかなか養成施設の新設に協力的でないといった話となり、ついにこれだけのデータは医事新報といわず日本医師会雑誌に載せてもらいたいとの宮坂常任理事の発言となりました。

 最近、とかく日医執行部の弱腰とか政治力のなさとかが批判される中、各委員会の活動はいずれもこのようであろうと思います。あとは各委員会の意見を日医執行部がどのように吸い上げ、施策に生かしていくかにあると思います。そうでなければわざわざ朝から1日つぶして東京まで出て行く意味がないし、次の委員会までの準備の大変な労力も徒労に終わってしまうことになります。大変な思いをして東京まで出掛けている各委員会の委員の方々の為にも、また日本医師会全会員の為にも報われる委員会活動になるよう願ってやみません。


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