(1)医療費の動向
毎年1兆円ずつ増加して2025年には141兆円との推計は、貨幣価値を考慮に入れずにやたら危機感を煽るもので、数字の魔術に過ぎない。対GNP比での議論にしてもらいたい。国民所得の何%を健康を守るために投資するのかということが今こそ問われている。パチンコ産業、防衛産業などと対比してみても、国を守る、自分を守る、楽しむというような価値観の配分で、どの程度が医療費に使われることが妥当と考えるのか、国民皆保険制度に守られて“医療は金のかからないもの”とされてきた神話が崩壊しようとしている今こそ国民的議論が必要となっている。
 老人は、機械に例えて考えても、若い人よりはるかにメンテナンスに金のかかることは自明であるが、確かに5倍というのはいささか多いように思われる。これは患者側にも、医療供給側にも定額だからというコスト意識の低さが災いしていたことは反省の余地がある。その意味で、現在実質5%程度の自己負担を定率化して、双方にコスト意識を喚起することは容認できる。しかし、1割、2割と急速に自己負担を増大させることは、長引く不況下、預金利率の低迷の中での平均的年金生活者の実態を考えれば、かなりの受診抑制を招き、病気の重症化を惹起する恐れがあり、反対である。今回は定率化の意味を重視して、自己負担は5%としてもらいたい。

(2)医療費財源
まず、保険料率をバブル期に下げた分、再度引き上げて元へ戻してもらいたい。次に、健康保険法を改正して、保養所等への支出を中止し、医療費財源へ振り向けること。医療保険の一本化へ向けて、事業所の医療保険料の事業主負担分を給与に振り替え、組合健保、政管健保を廃止、すべての国民が加入する医療保険組合を、現在の市町村国保を人口50万人程度以上の規模に拡大して、創設し、地域で運営する。ちなみに、介護保険も同一規模とし、例えば医療保険は保険料と自己負担、介護保険は公費(税金)と自己負担という形で明確に区分してはどうか。



(1)高齢者医療のあり方
   高齢者も急性疾患は入院、外来とも出来高払い、長期療養については入院はできるだけ施設へ移すか、在宅療養に切り替える。施設は医療と介護の必要度合いにより療養型病床群、老人保健施設、特別養護老人ホームなど2−3種に区分する。
(2)自己負担のあり方、費用負担のあり方
   前述の一本化した医療保険組合ができ、定率負担となれば、拠出金の問題はなくなり、自己負担の率の問題のみとなる。医療保険については、もし前述のように介護保険を公費と自己負担のみとし、保険料を徴収しない場合は、医療保険については公費負担なしでもよい。もし、双方に保険料と公費負担があるとすれば、医療保険は最終的には本人、家族、老人を問わず保険料6割、公費負担2割、自己負担2割が妥当、介護保険は最終的には保険料3割(当面45%)、公費負担5割、自己負担2割(当面5%)が妥当と考える。
(3)公的介護保険との関連
   医療と介護の関連度合いにより、施設によって定額の何割は医療保険から、何割は介護保険から、何割は自己負担というように規定すればよい。例えば、療養型病床群は医療保険4割、介護保険4割、自己負担2割で、老人保健施設は医療保険3割、介護保険5割、自己負担2割、特別養護老人ホームは医療保険1割、介護保険7割、自己負担2割とか。
 外来は通院はすべて医療保険(2割自己負担を含む)、訪問診療は医療保険4割、介護保険4割、自己負担2割などというように医療と介護の割合を議論して決定し、その度合いによって双方から支出するのがリーズナブルであると思う。














(1)給付率
   最終的には統一8割で良いと思うが、急激な自己負担の増大は避けたい。
(2)給付の範囲
   現在でも、研究目的の除外など給付の範囲は制限されており、特に今以上に給付範囲を狭めたり、重点化する必要はそうないと考える。ただし、医療保険組合が一本化されれば健康診断や人間ドックなどの予防医学的なものも給付の範囲に含めるよう検討すべきである。また、現在俎上に上がっている軽費医療の除外は大変な問題であり、病気の早期発見、重症化阻止の観点からも、むしろ軽費医療こそが医療保険の根幹であると考える。(3)患者負担の見直し
   患者負担が最終的に2割に統一されることについては異論はないが、段階的ゆるやかな増加であって欲しい。
(4)その他



(1)薬剤の適正使用
   同じ病名であっても、患者の重症度によって薬剤の量や種類が違うのは当然のことであり、病名によって薬剤の規制が行われることには断固反対する。しかし、多剤、大量使用傾向のある医療機関が存在することは残念ながら事実であり、これに対して、例えば平均的医療機関の薬剤使用点数の1.5倍以上はカットするといったような総枠予算制に似たシステムを導入しても良いのではないか。
(2)
(3)薬価差を医業経営の原資とすることの是非について
   薬価差益は、それがすべて技術料に振り替えられるまでは、当然医業経営の原資であって、技術料の一部であると考える。
(4)「もの」と「技術」の分離について
   「もの」と「技術」は当然早急に分離すべきであり、技術料の評価を高くして欲しい。「もの」は購入価格プラス維持管理コスト(倉庫費、メンテナンス費用その他)で良い。
(5)薬剤の定額払い方式
   コスト意識の喚起に逆行し、容認できない。定額だからあれもくれ、これもくれと言われると医療にならない。
(6)償還払い制
   コスト意識を持たせるには有効だろうが、必要な薬を患者の側から要らないと言われる恐れもあり、医療の質が担保できず賛成できない。
(7)自己負担増
   ある程度の自己負担増はやむを得ないが急激であってはならない。
(8)給付対象外か除外か
   宣伝に踊らされて不必要な市販薬を飲んでいるケースも多々あり、国民の健康を守る立場からはむしろすべての医薬品を医師の管理下に置きたいと思う。したがって一分医薬品については、給付除外ではなく、できるだけ「処方箋が必要だが給付対象外である」とする方が医師として責任をもって患者の健康管理に当たることが出来る。
(9)その他



(1)定額化、包括化
   老人、幼児はしょうがないとしても、一般の急性期医療には絶対に定額化、包括化を持ち込んではならない。「コスト意識の喚起」という命題とも逆行しており、そもそも資本主義、自由主義社会において、検査をしてもしなくても、薬を貰っても貰わなくても窓口負担が同じというのは社会通念としてもおかしいという一般常識からも定額化、包括化は原則としてやってはならない。
 現在の定額化、包括化の限度は、一般の慢性疾患において、高血圧症の運動療法並のマルメの導入までが容認出来る限界であると考える。
(2)総枠予算制
   給付側としては最も御しやすい方法ではあろうが、医療の質の確保には最も問題のある方法であり、断固反対する。


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