日の目を見なかった
世界に誇る国民皆保険制度を含む我が国の医療保険制度は、今大きな岐路に立たされている。医療を守るのか、医療保険制度を守るのか、今医療保険審議会は制度そのものを守るために軽い病気の給付対象外など多少の質の低下や切り捨てもやむなしの方向に向かっている。しかし、制度はあくまでも医療を守るために立て直されるべきものである。私たちはこれに敢然と立ち向かう日本医師会執行部を支援し、国民的合意の形成に積極的に関わって行くために、このたびの医療保険制度改革にあたって次のことに留意するよう要望する。
1.総計数十兆円ともいわれる累積黒字をもつ組合健保を含むすべての医療保険の統合一本化がまず図られるべきである。困難であるからと言って臭いものに蓋をするようにこれを不問として、単年度の赤字のみを大々的に取り上げるのは問題のすりかえである。
2.同時に健康保険料で建設・管理・運営されている健保組合の保養所等の施設は、本来福利厚生費から支出されるべきものである。企業ないし企業グループに売却し、医療保険給付に当てるべきである。
3.先発メーカー保護の名の元に、輸入医薬品、輸入医療材料までもが輸入価格の何倍、何十倍もの薬価、材料費を設定される現在の薬価基準制度を根本的に見直す必要がある。
4.国民医療費は医療保険給付だけではなく患者負担も含まれる。医療保険給付を減らすために患者負担を増やすのか、保険料を上げるのか、未だ国民的合意は形成されていない。医療保険、税金、患者負担の割合をどうすべきかは経済のみを優先させて弱者を切り捨てる方向で進められてはならない。患者負担の増大は受診抑制を招き、かえって病気の重症化、医療費の増大につながるものであり、断固反対する。
平成八年九月七日