《外国人労働者(家族も含めて)

の医療費用の問題について》

 前回の中部医師会連合・医療経済特別委員会で「実際に外国人が受診する場合、どのような支払い形態があるか」との質問がありましたのでまとめてみました。

1.日本に入国した日系人及び外国人登録をした段階で1年以上の労働契約がある外国人は居住地(住民登録をした市町村)の国民健康保険に加入する事が出来る。しかし、入国時にその事を知らされていない場合や保険制度に対する無知、あるいは保険料を払うのを嫌って加入しない者もいるようである。また、「日本国民は国民皆保険制度により必ずいずれかの健康保険に加入すること」が義務づけられているが、外国人の場合は「上記有資格者は加入する事が出来る」という違いがある。

2.上記の国保加入有資格者を含め、数カ月の労働契約の者でも雇用された会社の組合健康保険、又は、政府管掌健康保険に加入する事が可能である。この場合会社の負担分もあるので会社の考えが優先する。しかし、会社が入れてあげようと言っても例えば政府管掌健康保険の場合、厚生年金加入とセットになっている為か余分な負担を嫌って本人が希望しないケースもあるようである。

3.労働者災害補償保険(労災保険)制度は国と事業所との契約で全額事業主負担の保険制度であり、国籍に関係なく適用される。

4.不法滞在者および上記保険に加入出来ない短期滞在者は「自費診療」、又はAIU等の旅行者保険となるが下記の法律の適用を受けることが出来るかもしれない。

5.結核予防法は、結核と診断して予防法の適用を申請し、認められれば国籍に関係なく適用される。

6.生活保護法については、1954年社会局長通達で「外国人登録さえしてあれば、一般国民に準じて生活保護の適用をしても差し支えない」とされ、実際に適用されていたが1990年10月厚生省社会局保護課企画法令係長が全国地方自治体所管課長会議で「非定住外国人に生活保護を適用するのは適当でない」との口頭での指示が行われてからは以後の適用は行われていないようである。今後の検討課題の一つである。

7.「行旅病人及び行旅死亡人取扱法」は住所不定、無職が原則の法律で現在適用範囲は狭いが東京都でこの明治の古い法律を生かしてなんとか救済しようとしているとの新聞報道で話題になり、すでに静岡県でも浜松市と浜北市の2件がこの法律で救済された。適用範囲を拡げる事や、十分な予算措置の要望が今後の課題である。

8.「救急医療損失補填補助金制度」は救急車で搬送された患者が診療後不払いとなった場合地方自治体へ請求できる制度であるが現在は予算措置が十分でない為全額の補填ができないとの事である。十分な予算措置の要望も課題の一つである。

9.「無料低額診療事業」は社会福祉事業法で社会福祉法人などに年間総患者数の10%年間総医療費の10%相当額の医療費免除を行うことを求めているがこれに対する税の減免措置もなく実際にこれを行う事は経営的に困難で、実効はないのが現状である。


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