「外国人労働者の医療に関する
アンケート調査結果」の総括

静岡県医師会

 我が国に入国する外国人は、年々増加傾向にあり、我が静岡県では特にブラジル、ペルーを中心とする日系人の増加が顕著である。彼らは慣れない土地で、言葉や生活習慣の違いからとまどい、悩み、苦しみ、時には様々なトラブルを引き起こし、また巻き込まれる。私たちは医師として、彼らとの関わりの部分でどのように対処すべきか、適切な診断を下すためには言葉による意志の疎通は欠かせない問題であるし、生活習慣の違いを知ることも重要な事だろう。

 私たちは、昨年9月の浜松市医師会でのアンケートによる実態調査にひき続き、県医師会レベルでは初めて県下全域で同様のアンケート調査を実施した。その結果は別紙のとおりであるが、半数以上の医療機関より回答が寄せられ、回答医療機関の70%が外国人を診療しており、国別ではやはりブラジル人が圧倒的に多く、日系人であるという特殊性、家族単位の来日が多い事、早く日本に溶け込もうとする意欲で言葉の覚えも早いせいか言葉では意外に困っていない事、また、新聞報道で話題になる不払いの問題も1.9%と以外に少なく、しかも開業医レベルでは件数、金額ともわずかで、圧倒的に病院に偏っている事などが明らかとなった。ただ、日本人との最も大きな相違点は保険診療が国保、社保あわせて43.5%と少なく、自費診療が45.3%を占めている点であった。こうした結果をふまえて静岡県医師会では別紙のような国、県、市町村、雇用主など各関係団体への要望事項をまとめた。

 これは、増加の一途をたどる流入外国人のもつさまざまな問題点のたった一つの側面に過ぎないと思う。私たち医師の立場から見ても、外国人診療の特異性に対応した勉強も必要であるし、不法入国、不法滞在の問題もまた医療と無関係ではない。ただ、私たちの立場としては、不法入国、不法滞在の取締りは司直の手にゆだね、あくまでも病めるものを救う立場としてこの問題に取り組んで行きたい。

<外国人労働者(家族も含めて)
の医療費用の問題について>
アンケートにもとづく要望事項


 静岡県医師会 国に対して

1.外国人労働者に関する健康保険の特例措置として、厚生年金を切り離して健康保険単独で加入できるよう配慮して欲しい。
2.外国人労働者の国民健康保険の加入資格取得基準を緩和し、「1年以上滞在」から「半年」程度に短縮して欲しい。
3.入国時に日本の健康保険制度、社会保障制度に関する資料を配布し、周知をはかって欲しい。
4.「外国人労働者医療費援助基金」などの民間のボランティア基金の創設を援助し、公的補助を行って欲しい。
5.社会福祉事業法に定める「無料低額診療事業」を実効あるものにする為、税の減免措置等を行って欲しい。


県及び市町村に対して

1.有資格者に対する国民健康保険の加入を促進して欲しい。
2.「行旅病人及び行旅死亡人取扱法」を必要に応じて国籍を問わず適用し、また事例に備えて十分な予算措置をして欲しい。
3.「救急医療損失補填補助金制度」は本来国籍に関係なく救急車で搬送された患者が診療後不払いとなった場合、地方自治体が責任をもってその損失を補填すべき責務を全うする為に創設された制度のはずで予算措置が十分でない等の理由で減額されるべき性格のものではないはずである。十分な予算措置を行い、保険診療に見合う損失補填を行って欲しい。


外国人労働者を雇用する事業所に対して

1.雇用予定期間の長短に関わらず、日本人同様、正式に雇用した者は組合健康保険、政府管掌健康保険に加入させて欲しい。


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