FM静岡「今日も元気で」 −夏と胃腸シリーズ−

平成2年9月18日(火)〜9月21日(金)放送


第一回:冷たい物は控え目に

 夏は胃腸にとって大変な季節です。クーラーや扇風機で冷えますし、冷たい飲み物や果物、アイスなどでまた冷えます。
 私達が診察しますと、体の外からみぞおちの辺りを触っただけで冷たく感じるほど冷えきった人もいます。
 そうなると胃の粘膜は冷えて、消化吸収の力も落ちますし、食欲もなくなります。
 しかし、食欲中枢に対する働き掛けは各個人で異なり、胃の粘膜が馬鹿になって満腹感がなくなり、いくらでも食べれるがおいしく感じないといって結局は食べ過ぎてしまう人と、食べたくない、食べる気がしないといって食べないで夏痩せする人、普通の食事は要らないが水物なら幾らでも入るといって冷たいものばかり飲んでいる人、水物はさっと胃をとうり過ぎてしまいますが、その水物で胃を満たしてつかの間の満腹感を味わう訳です。
 しかし、この場合でも缶コーヒー、ジュース、コーラ、ビールなどのカロリーの高い飲み物ばかり飲んでいる人と、カロリーのないウーロン茶などを飲んでいる人とは違います。
 カロリーの高い飲み物ではカロリーは充分ですがビタミンやミネラルは不足します。いずれにしろスタミナ不足は免れません。
 これを脱却して、本当の食欲が出るようにするには、まず、温かいお茶にすること、それが出発点です。
 温かいお茶ならがぶ飲みする事もないでしょうから飲み過ぎる事もありませんし、脱水も防げるでしょう。
 夏こそ温かい物、特に胃腸の弱い人はそう心がけたいものです。

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第二回:なんでもゆっくり、良くかんで 

 日本人はせっかちだとよく言われます。
 戦争を経験した世代は早飯、早ぐそでサッと防空壕へ避難しなければなりませんでしたし、生めよ増やせよで家族も多く生存競争がきびしくてとてものんびり良くかんでなどいられなかった時代でした。
 その名残は悲しい習性としていまだに残っているでしょうか。
 そうでなくても、家庭の主婦は後片付けなど用事がたくさんあってとてものんびりしていられないかもしれません。
 しかし、消化吸収に関しては、ぶどう糖などのカロリーになる物は比較的かまなくても吸収されますが、ビタミンやミネラル、必須アミノ酸は良くかまなければせっかく食べてもあまり吸収されずに便に出てしまうと考えて下さい。
 特にアミノ酸は、肉や魚などの動物性蛋白質はもちろん、野菜などの植物性蛋白質だって異種蛋白質ですから、消化酵素とよく混じり合って一つ一つのアミノ酸に分解吸収されて初めて人の役に立つのであって、異種蛋白のままでは蕁麻疹などのアレルギーの原因になってしまいます。
 ビタミンやミネラルがないと糖分もうまく利用されませんから中性脂肪となったり、皮下脂肪になってたまったりして良いことありません。
 あれが良い、これが良くないと言う前に「何でもほどほど」、ただし、「なんでもゆっくり、良くかんで」というのが原則です。
 それを基本においたうえで、胃の弱い人は甘いものやくどいもの、脂っこいもの、刺激物を避けてできるだけ消化の良いものを摂るように心がけて下さい。

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第三回:水分の摂り方は尿の色を見ながら

 夏場はとかく水分の摂り過ぎになりがちです。
 暑いので冷たい物がとてもおいしい季節です。
 汗も良くかきますから冬よりも少し多めに水分を摂らないと脱水になってしまいます。
 今年の夏は何年振りかで異常に暑い夏でしたので、ビールやクーラーの売れ行きも異常に多かったそうです。
 いつもはお年寄りは寒い冬に多く亡くなるのですが、今年の夏はとても多くのお年寄りが亡くなりました。
 その原因の大半は脱水でした。
 お年寄りの場合、冷たい物を飲む習慣がないので、異常に汗をかいた場合の対応がうまくいかなかったようです。
 しかし、だからといって水分の摂り過ぎは胃をだぶつかせ、食欲を無くし、夏バテの原因にもなってしまいます。
 上手に水分を摂るには、おしっこの色を見るのが一番です。
 正常な尿の色は薄い黄色です。
 朝一番の尿の色は、その前の約8時間眠っていて排尿していませんので少し濃くなっていますが、2回目からの尿の色は薄い黄色でなくてはなりません。
 うんと汗をかいてあまりおしっこが出ない時、たまに出るおしっこはどろっと濃いのを経験された方もあろうと思います。
 そういう時は、もし自分では結構飲んでいるつもりでも、汗に取られてしまって結局水分が足りなくなっているのです。
 こういう時は意識的に水分を多く摂るようにして下さい。
 逆に、おしっこが透明なお水のようになったらこれは完全に水分の摂り過ぎです。
 水分を控えて下さい。
 尿は私達の水代謝のとても大切な情報源です。

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第四回:ストレスを胃に持ち込まないで

 人間の体の中で最もストレスに弱い臓器はどこか、ご存じでしょうか。
 それは臓器としては胃と心臓ということになります。
 頭が痛いということもありますが、つらいことがあるとキリキリと胃が痛んだり、キューンと胸が痛んだりするのは誰でも経験ずみだと思います。
 胃へ来るか、心臓へ来るかは個人差があるようですが、誰もが確実にそのどちらかへストレスを持ち込んでしまうことになっているようです。
 特に始末が悪いのは、まだ脳の方でそれほどストレスとして感じていない程度でも、胃や心臓は真っ先に敏感に反応してしまう事が良くあります。
 そして、ストレスによって胃の動きはとても悪くなります。
 それは甘いものやくどい物、脂っこい物、刺激物を食べた時の動きの悪さとは比べものにならないくらいです。
 そしてそういう状態が続くと胃が荒れて来てやっかいな神経性胃炎の状態になってしまいます。
 しかし、こうなるかならないかもやはり個人差が大きいのです。
 楽天的な人、ストレスを発散するのが上手な人は軽くて済む訳です。
 どっちみち世は正にストレス時代、ストレスがなくなるなんて考えられませんからどうやってそれを上手に、実害なく切り抜けるか、逆にストレスを楽しむ余裕があるか、これが人生を楽しく生きるか、辛い人生となるか、人生最大のポイントであるかもしれません。
 是非、発想の転換を図って、ストレスを自己研鑽の糧として有意義な楽しい人生を送っていただきたいと思います。

                  

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            FM静岡「今日も元気で」 平成2年9月18日(火)〜9月21日(金)放送

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