FM静岡「今日も元気で」−消化器疾患シリーズ1−


 FM静岡「今日も元気で」 平成2年11月27日(火)〜11月30日(金)放送


第一回:

 消化器の入り口は口です。途中まで呼吸器と共用しています。まず、入り口から見てみましょう。口の回りにはいろんなものが出来ます。口角炎、口唇ヘルペス、口囲皮膚炎などが代表的な物でしょうか。口角炎はビタミンB群の不足で起こることが多く、他にカンジダなどの真菌、貧血、発熱、よだれなども原因となります。口唇ヘルペスはウィルス性ですが、良く風邪薬を飲んだら出来たとかとかく医者のせいにされてしまう口の回りの水疱性のできものです。弱いウィルスなので日和見感染といって体力が低下した時、例えば胃が悪くなった時とか、風邪を引いた時、特に熱を出したとき、睡眠不足、過労、甘いものの食べ過ぎなどでおこります。このウィルスの2型では、外陰部にも小さな潰瘍を作り性病の一種としても注目されています。口の中では歯ぐきが真っ赤に腫れ上がり歯肉口内炎の形をとります。口の回りだけなら普通は放っておいても一週間位で治りますが、時として目へ入って失明したり、脳へ入ってヘルペス脳炎を起こす事があり馬鹿にできません。各種の癌、AIDSなど免疫力の低下した時にもできやすいので今注目の病気のひとつです。体力をつけるという のがまず大切です。口囲皮膚炎は特に冬、口唇が乾燥して舌で口の回りをぺろーっとなめてしまう癖のある子は必発です。絶対なめないことが治療の出発点です。蕁麻疹などのアレルギーで唇がぼってり腫れることもありますね。口は比較的無防備に何でも受け入れ、また全身性の影響も受け易くとても大切なところです。大事にしたいですね。(それでは今日もお元気で!)               

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第二回:

 昨日は唇とその周囲のお話しをしました。今日は、口の中のお話しをしましょう。口の中に出来るものの代表は口内炎です。昨日お話ししたヘルペスウィルスや手足口病、水疱瘡などのウィルスによるものは元の病気が治らなければ治りません。これに対して、風邪を引いた時とか甘いものを食べ過ぎた時にできる口内炎は大体ビタミン不足と考えていいでしょう。野菜などビタミンの摂取不足、ちゃんと食べても胃が悪くての吸収不足、ちゃんと食べてちゃんと吸収しても消費が増えて足りなくなる場合、これには風邪引き、特に発熱、過労、睡眠不足、甘いものの代謝には大量のビタミンが消費されるのでこれも要注意です。大体はこのいくつかが複合的に重なり合って出来るものです。決してお医者で貰った薬ばかりが原因ではありませんので慌てて薬をやめないでかかりつけへご相談下さい。転んで歯で頬の粘膜や歯ぐきや唇を傷付けて出来る口内炎もビタミンの補給と塗り薬で良いでしょう。中には口内炎が癖になって慢性再発性アフタの形をとる事もあります。これもビタミンの補給で様子を見ますが、一部にはベーチェット病などの難病が隠れている事があって油断出来ません 。小さい子では鵞口瘡といってカンジダでおこる口の中のミルクのカスのような、しかしこびりついてとれない白い偽膜の出来る病気があります。指しゃぶりや抗生物質の飲み過ぎに注意し、指にテープを巻き、抗生物質を飲んでいれば中止し、カンジダをやっつける薬を擦り込みます。子供は何でも口へ入れようとしますからいろいろ気を付けなくてはなりませんね。(それでは今日もお元気で!) 

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第三回:

 今日は口の中で舌、舌べろのお話し、舌は漢字で書くと間違う人はないでしょうが、放送ではしゃべりにくい、わかってもらいにくい言葉の一つです。舌は随意筋の一種ですが、他の随意筋が骨のある部分と別の部分にくっついて曲げたり伸ばしたりして働いているのに対して、まるで食虫植物みたいな根の生えた生き物のように脳の命令で自由に動きます。病気としては、昨日のカンジダや水疱瘡にもやられますし、いちご舌は猩紅熱で起こります。これは正確には西洋いちごに似た舌乳頭の腫れたもので、昔は恐い病気でしたが今では溶連菌感染が原因とわかり抗生物質で治せるようになりました。舌炎はビタミンの不足で起こることが多く、鉄欠乏性貧血や悪性貧血にも注意します。あまり心配のないものでは子供に多い地図状舌、これは放っておいても10日位で治ったり、また再発したりします。深い溝のできる溝状舌、これも溝の中にカスが溜まって感染を起こさないように口の中を清潔にしておけば心配ありません。胃が悪いのではないかと良く心配される舌苔、舌ごけは現在では胃腸との関連はあまりないことがわかり、普通は舌の動きが少ない時、朝とか長い時間食事が出 来なかった時に多く発生し、また口内炎などの口の中の急性炎症で増えます。食欲がなくてあまり食べれない時にも出来ますからそれは胃と関連があるともいえますが、全く出来ない時は舌炎の疑いがあります。舌癌は舌に出来る口内炎様の深い潰瘍に注意し、あやしいものがあれば思い悩まずに早めにかかりつけにご相談下さい。(それでは今日もお元気で!)

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第四回:

 口は消化器と呼吸器の共同の入り口ですが、普通呼吸をしている時は食道への通路はおしつぶされたようになり気管の方が開いています。何かを飲み込もうとすると甲状軟骨、外から見ると喉仏ですがこれが上へ上がって気管に蓋をして食道への通路だけが通れるようになるわけです。コインや釘が誤って気管へ入ったりするのは飲み込むつもりのない時に起こります。子供がピーナッツを食べていて泣いたりした時とても危険な事故がおこる事があるといわれていますが、それはかみ砕いたピーナッツの小片を泣いている最後の段階でヒーッとしゃくりあげるように息を吸い込むのに混じって気管へ吸い込んでしまう為に起こるものです。喉の奥にはリンパ組織として大切な扁桃、いわゆる扁桃腺があります。子供の頃は大きく、小学校に入るころには目立たなくなるのが普通ですが、頻繁に腫れて年に何回も高熱を出すようなら腎炎につながる心配もあり手術を考えます。そうでない単なる肥大の時はうがいの稽古をして大事に使いたいものです。喉の奥には耳管といって耳の中耳と喉をつなぐ管があり普段はしまっていますが唾を飲み込むと開き、鼓膜の内と外の気圧を調節する事が出 来ます。飛行機で上昇気流にのった時の耳鳴りは鼓膜の内外の気圧差で起こり唾を飲み込むと治るのを経験された方も多いと思います。風邪を引いた時おこる耳鳴りや耳の不快感は耳管が一緒に炎症をおこして唾を飲んでも開かないために起こります。腫れた扁桃腺で入り口をふさがれてしまう事もあります。常にうがいで奇麗にしましょう。(それでは今日もお元気で!)

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