FM静岡「今日も元気で」−消化器シリーズ2−


平成3年2月5日(火)〜2月8日(金)放送


第五回:

 消化器疾患の2週目です。今週も口と喉の周辺のお話しをします。風邪やアレルギー性鼻炎、蓄膿症などで鼻が詰まると口で息をします。口で息をすると喉がからからになって、しまいにはひりひりして痛くなります。咳も出始めます。普通に鼻で息をしていればそういうことはありません。鼻は実は涙で湿っているのです。目は涙を分泌してまばたきをしょっちゅうする事によって目の表面、角膜を常に濡らし、角膜が乾かないようにして保護し、空気中のゴミが付いてもその涙で流してしまいます。ファミコンなどで長時間、あまりまばたきをしないでいると目を痛めやすいのはそのためです。その涙は角膜を濡らした後は、目の内側といいますか鼻の付け根の所にある鼻涙管を通って鼻へ流れます。鼻が湿っているのはそのためです。そのほかに鼻粘膜からも分泌液が出ます。そして空気中のゴミなどを鼻毛でからめとってはなくそを作り、肺へゴミが入るのを防いでいる訳です。口の場合は唾液腺から分泌される唾液で湿っており、これは何か食べた時、あるいは何か食べる想像をした時に反射として出て来るものなので口で息をしたのでは出て来ずかえって空気中の湿度の影響を受 けて乾いてしまうのです。ですからしょっちゅううがいをするとかマスクをして口の中の湿り気が逃げないようにするとかして防がないと喉を痛めてしまうのです。特に空気の乾燥する冬は要注意です。(それでは今日もお元気で!)

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第六回:

 今日は唾液の話、唾液は食物の消化を助ける役目を受け持っています。アミラーゼといって膵臓から出る消化酵素とほぼ同じものです。ですからゆっくり良く噛んで食べるということはとても大切な事なのです。そういうと必ずダイエット中の人から「それじゃできるだけ丸のみにして食べたものがあまり消化、吸収されないようにすればいいのでは」という質問が出たり、あるいは黙ってそれを実行する人が出て来ます。しかし、良く噛む事によって良く吸収されるものは蛋白質やビタミン、ミネラルなどであって、糖分はあまりよく噛まなくても吸収されやすいのでバランスが悪くなって来ます。しかも糖分がうまく体の中で燃えてエネルギーとして使われるには蛋白質からできている各種の酵素や、補酵素としてのビタミンが必要でこれらがないと燃やせない余った糖分は中性脂肪などに変えられて貯えられることになります。つまりは肥満の原因になる訳です。
 また、蛋白質の場合は、人間は人間の肉を食べる訳ではありませんから肉や魚などの動物性蛋白質はもちろん、豆腐や野菜などの植物性蛋白質もすべて自分とは違う異種蛋白質ということになります。ですから消化酵素である蛋白分解酵素によって蛋白質を構成している一つ一つのアミノ酸に分解してから吸収し、そのアミノ酸を人間の遺伝子の命令にしたがって並べ変え自分に必要な蛋白質を作って使っている訳です。ですから胃腸の粘膜が弱っていてまだ分解途中のアミノ酸がいくつかつながったペプチドの状態で吸収してしまうとそれが自分の物と異なる配列である場合アレルギー反応を起こしてしまいます。気を付けましょう。(それでは今日もお元気で)

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第七回:

 今日も良く噛むことの大切さについて引き続き考えてみたいと思います。特に赤ちゃんの場合は良く噛むことによってあごが発達し、脳への適度な刺激によって脳の発達を促し心身の発育にとても大切な役割をしています。ですから離乳は早めに、そして軟らかい物から少しづつ固い物へと進めたいものです。欲しがるからといっていつまでも母乳をやるのは精神的に乳離れしにくい弊害とともに消化機能や脳の発達の面からも問題な訳です。ハンバーグ世代といって固いものの嫌いな、あるいは食べられない子供達の将来が心配されています。よく噛む事の利点はもう一つ、良く噛むことによって脳の食欲中枢、満腹中枢が働いて食べ過ぎを防ぎ、食生活のリズムを作ります。早飯、早ぐそ、早なんとかで戦時中はなんでも早くして防空壕へかけこまなければならなかった名残でもあるのでしょうか、日本人は概してせっかちだといわれ早食いの人が多いようです。早食いは唾液と混ざらない為消化が悪く、満腹中枢も働かない為ついつい食べ過ぎる原因となり、殆どこなれていない胃にとっては粗悪品が一気に入って来る為胃には負担をかける、体にとっては百害あって一利なしの行為と いえます。ゆっくり良く噛んで、良くこなれた半製品の状態で少しづつ胃へ送り込めば、たとえ荒れた胃でも、また胃下垂や胃アトニーなどの動きの悪い胃でも負担が軽く働き易くなる事が分かって頂けると思います。まず今日一日ゆっくり良く噛む事をこころがけてみましょう。そしてそれをこれからの習慣にしていきましょう。(それでは今日もお元気で)

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第八回:

 今日は唾液を作る唾液腺のお話をしましょう。唾液腺のうちで皆さんが一番良く知っているのはおたふく風邪をおこす耳下腺でしょうか。おたふく風邪はご存じのようにおたふく風邪ウィルスでおこり、お多福さんのようにほっぺの両側がふっくらとふくらむ伝染病で、ときには脊髄へ入って無菌性髄膜炎をおこしたり、睾丸炎をおこして男性不妊の原因になったりする事があり嫌がられます。単独の予防注射もありますし、最近副作用が心配され話題となった風疹、はしか、おたふく風邪の3種を混ぜたMMRもあり、現在は気を付けて使うということで再開されています。おたふく風邪は終生免疫といって一度かかると一生かからない訳ですがこのごろは片方しか腫れない子が多くおたふく風邪でない単なる耳下腺炎と紛らわしいケースもあります。治ってから一週間位して間隔をあけて2回位採血してウィルスの抗体価を調べればはっきりしますが普通はそんなことはしないで治るまでに一週間位かかればおたふく、3日位で治ってしまえば単なる耳下腺炎と考えたり、あるいは腫れるたびに合併症怖さでおたふくとして対処するようにします。予防注射の場合は90数%の確率で終生 免疫を獲得出来ます。おたふくでない単なる耳下腺炎とはウィルスによらない非特異性の炎症や唾石といって石が唾液を送る管の中でつまったりしておこります。大人の慢性耳下腺肥大は糖尿病を疑ってみる必要があります。唾液腺には耳下腺のほかに顎の下の顎下腺や口蓋の口蓋腺などがあります。唾液だけでなく涙も出なくなり鼻も乾く病気もあります。それぞれに良性、悪性の腫瘍もあります。異常に気が付いたら早めに主治医にご相談下さい。(それでは今日もお元気で)

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