FM静岡「今日も元気で」−消化器シリーズ3−

              平成3年4月16日(火)〜4月19日(金)放送


第九回:食道

 おはようございます。浜松市医師会理事の平良 章です。
 私の受け持ちの消化器疾患の3週目です。今週は食道のお話しを致します。
 今日は第九回目で、食道炎と食道潰瘍のお話しをします。食道炎にもいろいろありますが最も代表的なのは逆流性食道炎です。これは胃液、十二指腸液などが食道へ逆流することによって起こるものです。食道から胃へ入るにはまず胸部から腹部へ入らなくてはなりません。胸部と腹部の境は横隔膜で、食道はこの横隔膜にあいた穴の一つ、食道裂口から腹部へ入ります。胃の入り口は噴門といいますが、この食道裂口と噴門でキュッとしめられて普段は胃から食道へは逆流しないようになっているのです。ところが食道裂口がゆるんで胃が胸部まで引っ張りあげられる食道裂口ヘルニアや手術で食道の一部を切り取らざるをえなくなってやむなく胃を胸部まで持ち上げてつないである時、また妊娠や太り過ぎ、大量の腹水などで腹腔内圧が高くなって胃を圧迫した時、あるいは胃がんの末期でとうりが狭くなった時や十二指腸潰瘍、それに胃の出口付近の胃潰瘍の特に治りかけではん痕化した時など食べ物がスムーズにとうりぬけられず押し戻されるような時に胃から食道へと逆流してしまう訳です。ひどく吐いた時、炭酸飲料の飲み過ぎでゲップがたくさん出る時も要注意ですね。逆流によって食道炎だけ でなく食道潰瘍もできます。ひどい食道炎の為、食道粘膜がはがれそのあとが胃の粘膜で覆われるものをバレット食道と呼びそこに潰瘍ができることもあります。就寝時に上半身を10〜15度高くする事、刺激物を避け、やわらかい食物をとることが大切です。(それでは今日もお元気で!)
                       

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第十回:食道異物、食道損傷のお話し

 今日は食道異物、食道損傷のお話しをします。食道の異物は主に事故として、特に3才未満の乳幼児に多く見られます。コイン、ボタン、パチンコの玉、安全ピン、プラスチックのおもちゃの破片、魚の骨などいろいろあります。お年寄りでは睡眠中に誤って入れ歯をのみこんでしまったり、肉の塊やお餅がつかえてしまうこともあります。ときにはヒステリーなど精神病でわざとのみこんだのに出くわす事もあります。たいていの物はなんとかとうり過ぎてしまいますが尖ったものが時々刺さってしまうことがあり、また、大きい尖っていないものでは食道が生理的に細くなっている部分、とくに食道の入り口にとどまっている場合が多いのです。のみこんで差し支えないものは胃へ落とし込んだり、刺さった物は食道鏡で見ながら異物鉗子でつまみだしたりします。 食道の損傷は機械的には食道の異物を取り出す時に傷つけたり、まれに胃カメラの時傷ついたりしますが昨日お話しした食道炎の時と同じく就寝時に上半身を10〜15度高くすること、刺激物を避けやわらかい食物をとることでたいていは治ります。他にアルコールなど暴飲暴食の後で激しく吐いたりすると食道が裂け てしまう特発性食道破裂、裂ける程ではないが裂けたような傷の出来るマロリーワイス症候群を起こすことがあります。裂けてしまえば勿論手術しかありませんし、一刻を争います。食べた物、飲んだものが裂けた所から胸腔内に溢れ出るためです。マロリーワイス症候群の時は絶食にしてとにかくそっと、栄養と水分は点滴で補給しますが、時には手術が必要な時もあります。くれぐれも飲み過ぎには気を付けましょう。(それでは今日もお元気で!)                           

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第十一回:食道が狭くなる病気、食道狭窄

 今日は食道が狭くなる病気、食道狭窄についてお話しします。 食道に出来たひどい潰瘍や炎症が治ったあとにはん痕化して狭い食道がますます狭くなるのが食道狭窄です。鉄欠乏性貧血と舌炎を合併して食道が狭くなるプランマービンソン症候群というのもありますが困るのは硫酸、塩酸、苛性ソーダ、塩化アンモニアなどの強酸、強アルカリ性の腐食剤を誤って、あるいは自殺の目的で飲んだりして食道がただれてしまうことです。そのまま死んでしまう事もありますがただれが治ってはん痕化して食道が狭くなって通りにくくなってしまうことも多いのです。飲んで6時間以内で飲んだ物が分かっている場合はすぐ中和剤を飲ませます。腐って穴が空いて気管につながり、食べたものが気管に入って肺炎を起こして死んでしまうこともあります。通りにくくなった食道はブジーという器具を使って拡げますが狭すぎてうまく拡がらない時はそこはほっといてバイパスを作る手術をします。あとが大変なのでこういう自殺の計画は勘弁して欲しいと思います。 実際には食道の狭窄がないのに物が飲み込めない、あるいは飲み込みにくいと訴えることもあります。これは食道神経症といっ て髄膜炎、てんかんなど中枢神経系の障害で食道の通過障害を起こすものもありますが、ヒステリーなど心の病気でおこるものが主体です。いろいろ検査して何も異状の無いことが分かった途端に治ってしまう事も多いのです。(それでは今日もお元気で!)

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第十二回:食道静脈瘤のお話し

 食道の静脈がぼこぼこにふくらんでしまう病気を食道静脈瘤といいます。普通私達が肉眼でよく目にするのは足、特にふくらはぎに出来る下腿静脈瘤ですね。あのような、あるいはあれをもっとひどくぼこぼこにふくらませたようなものを想像すれば良いと思います。狭い食道で内側にそんなものが出来たら食べ物特に固いものがとうるときに傷ついて裂けるのではないかと思うとぞっとしますね。これが破れると大出血を起こし、口からは吐血といって血を吐き、下へ流れたものは下血といって血便になります。出血の量によっては出血性ショックを起こして死んでしまうかも知れません。食道静脈瘤は肝硬変や肝繊維症などで肝臓が硬くなり、小腸で吸収した栄養分を肝臓へ運ぶ門脈という血管が肝臓に血液を送れなくなり、しかたなく食道静脈やおへそのまわりの腹壁静脈を迂回するために出来るものです。症状としては多少ものが飲み込みにくい程度でかなりひどくなって破れるまで気付かないことが多いので肉眼で見えるおへそのまわりの血管の拡張や蛇行に注意し、時々血液検査で肝臓機能をチェックしましょう。急に出来るものではありませんし、仮に肝硬変と診断されても初 期のうちはまだそうひどくはないのです。早くみつけて静脈瘤が出来ている血管に血液が流れないように硬化剤を使ったり、バイパス手術をしたりします。もし破れればバルーンカテーテルといって風船のようなものを食道静脈瘤の破れた辺りでふくらませて圧迫して止血します。怖い病気ですから予防が肝心です。(それでは今日もお元気で!)

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