浜松リバティライオンズクラブ会報1989年7月号(第22号)
「お願いします」
また選挙の季節がやって来た。やたら「お願いします」の大安売り、宣伝カーからの「お願いします」の連呼の季節である。これが私は大嫌いである。私は「お願いします」ということばは大変な意味を持った言葉だと思っている。この言葉は、相手にゲタを預けてしまう言葉であるから、安易に、また不用意に使うべきではないと思うからである。「お願い」する以上、それ以前に自分のなし得ることのすべてをきちんとやって、その上で自分ではやれないこと、あるいは侵すべからざる相手の領分のことを「お願いします」でなければ、お願いされた相手はとても困ってしまうからである。やるべきことをしないでの「お願いします」はとても無責任なお願いで、選挙のときの「お願いします」と同じだなあと思う。
人間、生きている以上は常にお願いしたり、お願いされたりの繰り返しであるから、いつでも相手を困らせないような「お願いします」を言うように心掛けたいものだ。「あの人に頼まれれば嫌とはいえない。」という信頼関係とは、あの人なら無責任に他人にゲタを預けることはしない。あの人が頼むと言うことは、自分でやれることは精一杯きちんとやって、その上で力を借りたいということなのだから、「よっしゃ、まかしょ。」ということになって、その人の届かないところをフォローしてあげることなのだ。だから、その人になりかわって一所懸命やってあげる。それが信頼関係というものだといつも思う。