県西部浜松医療センター第13回院内研究会

シンポジウム「高齢者医療を考える」
平成10年3月14日
指定追加発言


浜松市医師会副会長・県西部浜松医療センター副院長(非常勤) 平良 章



 急激な少子高齢化にともなって我が国の保険医療は経済学の標的にされ、財政改革の波の中で特に高齢者医療について大きく様変わりしようとしています。アメリカ一辺倒であった厚生省は、近年欧米への度重なる視察を通して医療保険改革と称して高齢者切り捨ての方向性を示しています。寝たきりにさせないために、朝起きるとすぐに着替えさせて車椅子に座らせる、自分で車椅子を操作して食卓へ行き、自分の手で口元へ食べ物を運ぶことができなくなったら、自然死として結局餓死していくしかない。ある年齢以上は人工透析を打ち切るなど我が国の儒教的死生観では考えられない状況を見習って、国・厚生省はクールに強行しようとしているように思われます。

 病院でも、もうすぐ、おそらく2年後の平成12年4月の改定では、老人医療は定額化され、手術・検査を始め高額となる医療はすべて病院の持ち出しとなり、病院経営上実際は大幅な制限診療となることでしょう。在宅でできるだけ金をかけないで安らかな死を看取ることが老人医療の基本であるというコンセンサスが、あと2,3年のうちに形成されるものでしょうか。

 私自身、昨年7月から老人デイ・ケア施設を開設し、現在約60人の患者さんを通所で診させていただいておりますし、その方たちを含め70人くらいの患者さんの訪問診察を行っておりますが、痴呆の増加も決して平均寿命が延びたせいだけではないと感じます。現在の社会状況が核家族化に代表されるように老人を大事にしない、それどころか邪魔にする、したがって目上の人を尊重しない、人の命を粗末にして平気という風潮を作り出しているように思います。


デイケアでの様子

 最近、新聞紙上で小、中学校や県立高校のの統廃合が話題になっていますが、廃止される学校や空き教室を利用してぜひ子供と、特に乳幼児・小児と老人が触れ合う場所を作っていただきたいと念願しております。


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